「メゾ様-!」

暗い空間の壁際にあるドアが勢い良く開かれた。
眩しい光が差し込み、その光を背に羽根を広げた天使が仁王立ちしている。

「シトリ…相変わらず声が大きな…。」

出会ってそれほど日にちは経たないが、シトリと呼ばれた天使の破壊的な大声にはだいぶ慣れつつあった。
羽根を一度羽ばたくと、シトリは右手に持った袋を掲げて部屋に入る。

「お褒め頂いてありがとうございます!」

褒めてないんだけどなぁと思うメゾに、シトリはニコニコと少し照れたように笑う。

「頼まれていたもの、調合してきました。探すの大変だったんですよー。」

そう言うシトリは疲れた様子もなく、むしろ楽しそうだ。
そこへ同じドアからシェゾが入ってきた。

「シトリか。材料は見つかったのか?」

黒く長いローブを引きずって歩くが、足音はない。

「はい!初心者キットの始まりの雫、緑の根っこ、太陽の欠片、それと頼まれた心のもずくです!」

全ては箱庭の世界を創るために必要な材料。
これを粉末にしたものが、シトリの持つ袋に入っている。