城からの帰り道、ただひたすら歩きながらアルムは考えた。
残された2日間の過ごし方と、リリアへどう伝えるかを。
木々の隙間から漏れる陽光が作る影。
心地良く響く鳥たちの歌声。
もうすぐ自分がこの世界の犠牲となって死ぬ。
そう思うと全てが愛しくなった。
自分はリュークが好きで、それを守る為なら喜んで命を差し出せる。
ただ、本当に愛している人達が、自分の死で悲しむことだけが気がかりだ。
浮かない気分のまま、アルムの住む街、リープへと向かった。


「お帰りアルム!」

リリアがアルムの家の前で大きく手を振っている。
胸がちくりと痛んだが、アルムは笑顔でただいまを言った。
2人でアルムの家へ入り、ダイニングテーブルの椅子へ腰を降ろした。

「びっくりしたよ。急にお城へ行くなんて言い出すから…。」

「すみません。どうしても行かなきゃならない急用ができてしまって。」

アルムは苦笑しながらも、リリアの目を見ることができなかった。
どこから話そうか、どう伝えようか、結局何も決まらないまま街に着いてしまった。
なかなか顔を上げないアルムに、リリアは不安を覚えた。

「どうしたの?お城で何かあった?」

リリアの問いにアルムは決意し、ややあってやっとリリアの目を見つめた。

「リリア…。僕は、リュークのために2日後王の手によって命を絶ちます。」

アルムの言葉はリリアの耳を通り抜け、静かな空間に消える。
何を言っているのか、リリアには一瞬解らなかった。