リュークには1つの城がある城下街の他に、23個の街がある。
街同士の闘争は時々起こるが、至って平和な王国であった。
国王は5年毎に各街から代表者を決め、その中から選ばれて継がれる。
現国王、リクはつい3ヶ月前に王位を継承したばかりだった。
そしてリュークの中でも田舎街の出身。
そのせいか人柄も良く、国民の意思を尊重し、王としての勤めを立派に果たそうと努力していた。

「リク王、謁見したいと申す者が来ておりますが、いかがいたしますか。」

執務室で仕事をしていたリク王に、大臣が知らせに来た。
リク王はまだ慣れない環境と仕事に、顔に疲れの色を浮かべている。
大臣は心配し、謁見を断ってもいいとも伝えた。

「いえ、大丈夫です。謁見の間ですよね、今行きます。」

そう言いながら椅子から立ち上がり、部屋を出て行こうとするリク王を大臣は呼び止めた。

「陛下、王たる者がそのような言葉遣いをしてはなりませぬと、申し上げたはずですぞ。」

諌める言葉には優しさが含まれていた。
リク王はそれを確かに感じ、反省と感謝の意味を込めて“すまない”と言って部屋を出た。

執務室がある突き当りから、真っ直ぐに伸びる廊下をリク王は静かに歩いた。
窓から差し込む優しくて穏やかな陽光を浴びながら、意識的に背筋を伸ばして進む。
王らしくと、いつも気を配っているつもりだが、つい気が抜けると田舎者らしさが出てしまう。
そこら辺もまた愛嬌で、城内の皆は微笑ましく思っていた。