私は泣いた


彼は滅多に泣かないのに私と一緒に泣いた...


「俺はっ!!俺は...シンガーソングライターを辞める覚悟はあるっ!!でも.....お前を忘れるなんて.....なんで....なんでアルツハイマーなんかになったんだよっ!!!!」


『翔っ...!』




その日から翔は少しずつ病気に侵されていった



まずは物の名前を忘れる



「利菜...これなんだっけ..?」


『それはかぼちゃよか・ぼ・ちゃ』


「そっか、サンキュー」


その次は物の使い方を忘れる


「利菜これどーすんの?」


『折りたたみ傘はこうやって折って.....ほら、コンパクトになったでしょ』


「スゲーな利菜!!」




最初はまだよかった


最近は身近にあるものまで忘れてしまう


フォークの使い方スプーンの使い方


どの料理にどれを使えばいいかも.....



そのたび彼は苦しそうに笑う


彼はギリギリまでシンガーソングライターをしていたがこれ以上できないと判断したのか芸能界を引退した


ある日のこと.....



「利菜...今いいかな?」

『うん』

彼がアルツハイマーになってからは私たちは同棲していた



そして今リビングにいる

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