時はさかのぼり……13年前。
それは、春風が心地よい今日この頃─…
『─…この子が香ちゃん?』
お母さんの後ろに
ぴったりとくっついて離れない、
ピンクのワンピースを着た
2つぐくりの小さな女の子は、
ビクッと体を反応させた。
『ええ。そうよ、ちょっと照れ屋なんだけどね』
と微笑むのは、香の母親。
『あら〜、かわいいわねぇ。…それに比べて、うちのゴン太坊主は…』
『お前誰?』
とオレンジのTシャツと
深緑のズボンを履いた
スポーツ刈りの男の子は、顔を近づけて香をじっと見つめていた。
香は、ざっと後ろに逃げた。
『こら!昌春!!あんたはまた……』
と香から昌春を引き離す昌春の母親。
その様子を見てクスクスと笑う香の母親。
『いいのよ。いいのよ。香と昌春君には仲良くなってほしいし…』
『そうね。是非とも2人には、仲良くなってほしいわね』
と引き離されても尚、
香を追いかけ続ける昌春と
必死に逃げまどう香を見て
ニヤニヤと昌春の母親は、笑った。

