営業時間が終わり、京子は売場に残って、萩野主任を待った。



「やあやあ、待たせたね。売上げランキングのことで部長に呼ばれてね。
すまない、すまない。」



「いえ…。」


京子は小さく答えた。


「さて、始めようか。京子くんはまず、声が小さいんだよ。

腹から声を出さないと、お客様には届かないよ。
いってごらん
『いらっしゃいませ』はい。」



『いらっしゃいませ』
京子の出来る精一杯の声で叫んだ。
それでも普通の人の半分といったとこだろう。



「あ~もう、ダメダメ!おなかに力を入れて!」



そういうと萩野主任は京子の下腹に手を置いた。



『いらっしゃいませ』


「まだまだっ!おなかに力入ってないよ!」


『いらっしゃいませ』
「まだダメだっ」

『いらっしゃいませ』
「もっと大きい声っ!」

『いらっしゃいませ』

「肩に力が入ってるのかな?リラックスして…」



そういうと、萩野主任は下腹にあった手を肩に置いた。



京子は肩をすぼめた。


「さあさあ、リラックスだよ。」



萩野主任の手が肩から腕に降り、また肩に戻った。
そして、肩からお尻まで手を何度も往復させた。



「リラックス、リラックス」



京子は何も言えず、立ちすくんでいた。