「ナ・ツ・コさん!」


ナツコの後ろから小さく呼ぶ声が聞こえた。



「あら、京子。これから昼休み?
私も昼休みだからランチいこ。」



京子はナツコの同期だ。



声も背も小さくておとなしい。
ナツコとは対局にいるタイプといえる。



売場は化粧品売場だ。


二人は食堂へ向かった。



「京子どう?
接客は慣れた?」



「うん…。まだ話しかけるのが恥ずかしいっていうか…」



「そうか。京子は物静かなお嬢様タイプだもんね。」



「そんな、お嬢様ってことないけど。
両親がしつけは厳しい方だったから。一人っ子だし。」



「一人っ子なんだ?
私はね、妹がいるのよー。
それがね、私の就職が決まって家を出る時、寂しいって号泣してねー、
小さい時からずっとくっついてたから…
そうそう、あの子ったら小さい時にこんなことがあってね…。」



京子はナツコが楽しそうに話すのをニコニコして聞いた。



「元気かなあ、妹。」


「ナツコさん、うらやましいな。かわいい妹さんがいて。」



「ところで京子。そのナツコさんていうの
やめない?
私たち同じ年だから、ナツコでいいのよ。」


「私あんまり人を呼び捨てにしたことなくて。」



「ますますお嬢様ね。
じゃあナッちゃんでいいわよ。妹もそう呼ぶのよ。」



「それなら呼べそう。」



「そりゃ良かった。」


二人は日に日に仲良くなっていった。