ナツコは電化製品売場の唯一の女性社員だ。


電化製品を買い求める女性客は

売場にくると、ナツコに質問してきた。



「電気の蛍光灯なんだけど、こっちとこっちどう違うのかしら?」


ナツコは丁寧に応対した。



「こちらの蛍光灯は、付けたり消したりが多いところにおつけになって下さい。電気代がお得になり…」




「娘がビデオデッキがほしいっていうんだけど、
配線が出来ないの。
でも配線頼むと男性が来るんでしょう?
一人暮らしなのよね…」



「よければ私がお教えしましょうか?」



電気に弱い女性客は、知らないことが多過ぎて、
男性社員に質問するより、女性社員に質問するほうが
気が楽だったのかも知れない。



ナツコはたちまち女性客の心をつかんだ。



また、
ナツコには
専門的な知識があることが分かりはじめたのか、
男性客が増え始めていた。


フロア主任が言った。


「男性客からも認められるとはなあ…

むさ苦しい男の販売員よりは

女性の販売員のほうが
そりゃいいわな。
アッハッハ。盲点だったなあ!」



『工業高校を首席で卒業した、
ニューハーフ』



これがナツコの肩書きとなっていた。