あたしはまた本に視線を戻す。

するとさっきの男子の声が教室中に響き渡る。

「あ、レイだ。お~い、レイ~!」

「!」
レイ……

あたしは心の中で叫ばれた名前を呟いた。
そしてあたしもまたレイと呼ばれた人の方へと視線を向けた。

「あ、竹井。どした?」
廊下から声がする。そのままこっちへ向かってきた。

「今日さ~、部活どうするかなって。」
「あ~…、 !!」
レイがあたしに気づく。
「? どうした?」
竹井と呼ばれた男子はレイの視線の先を追う。

「…」「…」
あたしとレイは目が合って、変な空気が流れた。

「あ~…コイツか。コイツがどうかしたのか?」
「…いや、別に……」
「そりゃそうか。」

………

「レイとコイツの接点なんて、同じ学年ってなだけだもんな。笑」
竹井という人があたしをチラッと見てレイに笑いながらそう言った。

「あぁ、俺もアイツのことなんも知らねぇし。」
「ハハッそれな~♪」

………。

レイは何も知らない。
あたしの気持ちも、
あたしが声出ないことも。