そして昼休み。
皆がお昼を食べる幸せな時間、私はひとり憂鬱な気持ちで校舎三階の数学準備室へと向かっていた。
午前はずっとリトのことが心配要素だったけれど、今は数学の補習のことで頭がいっぱいだ。
佐倉先生のことだから、きっといっぱいプリント用意してるに違いない。
考えただけで気分が下がった。
この時間誰もいない三階の廊下は静まり返っていて、自分しかいないような錯覚になる。
5分でお昼を食べたお腹がちょっと苦しかった。
だけど遅れでもしたら佐倉先生に何を言われるか……っ。
そんな強迫観念に背中を押されながら、足を進めた。
***
「失礼しまーす……」
恐る恐る開けたドア。
その向こうにいたのは勿論佐倉先生で、私に気付くと座っていたイスから腰を上げた。
そこそこ広い中には、大きな定規やコンパス、他にも数学の授業でたまに使うような器材があった。
「来たか、馬鹿」
「何回馬鹿って言えば気が済むんですか」
開口一番が「馬鹿」とか、本当に教師の言う言葉だろうか。