それをリトの前に差し出して、舐め始めたのを見送ってから洗面所へダッシュした。


鏡に映る自分の姿を見れば、肩につかない位の長さのショートな髪が、あらぬ方向に跳ねていた。

「この寝グセめーっ」

顔を洗ってから、寝グセを直そうとくしで梳かしたけど、依然としてそれは明後日の方を向いていた。

な、なんて手強いやつなんだ。

毎朝のことながら、自分の寝相の悪さを痛感させられるなあ。

と、呑気に鏡の自分の寝グセを見ながら思っていたけど、はっ、と今の自分に置かれている立場を思い出した。

「やばっ、本当に遅刻する!」

呑気に髪なんか梳かしてる余裕なんてなかった!

ものすごい後悔をしながら、急いで歯を磨いて、慌てて制服に着替えて、カバンを手に取った。

半分走るように玄関へ向かったところで、私はあることに気が付いて部屋を振り返った。

「……、行ってきます!」

自分を見送りに来てくれたであろう、口の周りを牛乳で白く濡らしたリトに向かって、元気よくそう言ってから、私はドアを閉めた。


閉める瞬間、いってらっしゃい、と言うかのようにリトの鳴く声が聞こえた。