「平田ぁー怪我人!!」

「はぁーい!!」

野球部の部室から救急箱を取り出してグラウンドに行く。


「怪我人誰ー?」
「柴村」
「またぁー??」

遠くにいる亮は左手を見ながらこっちにゆっくりと歩いていた。

「柴村。早く」

亮はあたしを見るとゲッとした顔をする。
なんだよその顔。
あたしだって好きでアンタの手当てしてるわけじゃないし。
好きだけどさ…。
付き合ってるけどさ…。
なんだよその顔。
あたしは野球が好きで野球部に入ったの!!
だから同級生の女子マネなんていないけど入ったの!!




「柴村早く」

「あ、悪ぃ…」



「消毒するから叫ばないでよ」
そぅ言って若干乱暴に消毒液を付ける。

「っ…痛てぇーっ!!」
「うるさい!!慣れなよ!!」
「慣れたくねぇ;;」


亮はこの前、
3日前にも頬に怪我をしたばっかり。
3日前にあたしが手当てした頬は、今はカサブタになっている。
でも痛そう。




「最近どうしたの??前はそんなに下手くそじゃなかったじゃん」
「……………別に…」



「終わったか?」
「え、あ、あぁうん」

「サンキュ。俺練習戻っから」
「あ、あぁうん」


亮の、男の顔ってか………
恐いような真剣な顔をして一瞬ドキッとした。