「零、頼みがある」

旦那様に呼ばれ、"頼み"という単語にクエスチョンマークを飛ばしながらも、俺はなんでしょうかと返事をした。

「優姫の専属執事になってくれ。お前は、優姫とだいぶ年も近い。…頼まれてくれるか?」

旦那様は、たくさんの人間に対し、お優しい感情を持っていらっしゃる。

今だって、ただの執事である俺に拒否権はないのに、そのように仰ってくださる。

なんと、立派なお方なのだろうか。

「喜んで」

俺は微笑んでそう言った。
それに対し、旦那様はしっかりとしたお声で「頼む」と仰られた。

「優姫様」

「…はい」

「これから、お世話をさせていただきます、垣元  零でございます。未熟者ですが、よろしくお願い致します」

優姫様に向き直り、右手を左胸に当てて会釈すると、彼女はたどたどしく、「よろしくお願いします」と言葉を放った。

真っ白な光が俺たちを包み込んだ頃、桜の花びらがヒラリと一枚だけ舞いあがった。