お嬢様は、悲しい夢を見るみたいだ。

「おねえ、…ちゃん……」

もうすぐ陽姫様がお亡くなりになってから、八日が経過しようとしていた。
優姫お嬢様も、一週間後に高校の入学式を控えている。

だが彼女の本当の笑い顔なんて、祖父でいらっしゃる冬真様どころか、執事としてお側にいる俺でさえ見れないでいた。

…それもそうだろう。
幼い頃に亡くなられた両親よりも近かったであろう陽姫様がたった八日前に亡くなられたのだ。

「優姫お嬢様…」

涙を静かに流しながら眠る彼女の頬を指先で撫でる。

あぁ、彼女の痛みを代わってあげられたらよかったのに。
そうすれば彼女は泣かなくてよかったかもしれないのに。

この心は冬真様に掬い上げていただいたものだ。
だから、冬真様が何よりも大切にしているであろう優姫様のために自分の命をかけようと思った。

あの頃の自分と同じ瞳を持つ彼女を、救えればと思ったのに…!

「俺は…俺は……!」