「!」

突然後ろから声をかけられ、大げさなくらい肩が跳ねた。
恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはカーキ色の作業着を着た、私と同じくらいの黒髪の男の子が立っていた。

「あ、あの…」

「何?優姫お嬢様」

にっこりと言うより、ニヤリと言った感じの笑みを浮かべる彼は、有名メーカーのキャンディをくわえて、ズイッと私の方へ顔を近づけてきた。

「え、ちょ…」

「へー、君が零が仕える優姫お嬢様かぁ」

いや、ていうか…

「ち…ち、か……」

「ん?なんか言った?」

うわっ、綺麗な顔してるし、かなり…恥ずかしい…!!

顔に熱が集まっていくのを感じ、私はぎゅっと目を強くつぶった。

「お嬢様?どうしたの、熱でもあるの??」

スッと、自然な仕草でおでこに手が当たるのを感じ、ますます熱が集まる。

「垣元さ…!」

助けて!

そう思った、その時だった。

「宵波(ヨイハ)、いい加減にしろ」

垣元さんの声が間近で聞こえ、恐る恐る目を開けると、この男の子の手を掴み、間に入った垣元さんが目に映った。

「か…垣元さ……ん」

「あーらら。零、ずいぶんお早いお出ましで」

「茶化すな。お嬢様が怯えてるだろう」