「八重桜が咲き誇り、とても綺麗ですよ。庭で、お茶をしましょう」

そう笑った垣元さんの笑顔が優しくて、私はいいのかな?と思いながらも、頷いた。

すると垣元さんは顔をおもちゃを見つけた子どもみたいにパアッと明るくさせ、「今用意をして参ります。庭で待っていてください」と、長い廊下の向こうに消えていった。

私は彼の思いっ切りの笑顔にドキドキと胸を高鳴らせながら、垣元さんが消えていった廊下の反対を、緊張が溶け出して少しだけ軽くなった足取りで踏み込んだ。