「お嬢様、起きていらっしゃいますか?」

空を少しぼぉっと見つめた後、俺は早足でお嬢様の部屋まで来て、今はノックをしてお嬢様が起きていらっしゃるか確認していた。

「垣元さん?もうちょっと待ってください。もう少しで着替え終わるので」

どうやら、お嬢様はもう起きて着替えていたようだ。

「はい、分かりました」

俺はお嬢様が着替え終わるまで、扉の横で待っていようと、姿勢よく背筋を伸ばしてそこに立った。

すると、三分もしないうちに扉が開き、可愛らしい柄の部屋履きを履いたお嬢様がひょっこり顔を出した。

「おはようございます、お嬢様。よく寝られましたか?」

「は、はい…」

俺が斜め45度に腰を折り曲げると、お嬢様は少し戸惑った様子でそう返された。

やっぱり、この前まではこんな世界とは無縁に生きてきたのにいきなりお嬢様扱いは馴れないし、キツいのかなぁ…。

そんなことを考えていたら、お嬢様が不安気に俺の顔を覗きこんできた。

それに俺は安心させるように笑いかけて、「朝食の用意が出来ております。食堂に参りませんか?」と手を差し出した。

「は、はい」

お嬢様は俺の手に手を伸ばした。
その時、タイミングが良いのか悪いのか、くぅーっという可愛らしい音が聴こえた。

「あ…」

お嬢様がお腹を真っ赤な顔で押さえた。