真っ青な絵の具を溶かしたような空が、太陽に照されていた。

今日もいい天気だと、意味もなく上機嫌になる。
俺は、一昨日この屋敷へと足を踏み入れたお嬢様を思い浮かべながら、鼻歌なんか歌っていた。

妙に浮かれているのが自分でも分かってしまって、ちょっと苦笑い。

「おはよう、零。ずいぶん上機嫌じゃないか」

仕事場に入って、巽があまりにニコニコ笑ってる俺を不審に思ったのか、そう声をかけてきた。

「へへっ。おはよう、巽。なんか、いい天気だと嬉しくならない?」

俺が普通にそう答えると、巽は呆れた様子もなくにっこりと笑った。

ホント、そういうところって大人だよね。巽って。

「でも、本当にいい天気だな」

「うん。空が綺麗な日だね」

ちなみに、今の時刻は朝の5:30。前はあと30分早かったんだけど、お嬢様のお世話をするにあたって、旦那様が30分も下げてくださったのだ。

俺は5時で大丈夫だって言ったんだけど、旦那様はそれじゃ大変だろうからって。

結局、お言葉に甘えたんだけど、馴れって恐ろしい。
普通に前起きてた時間と同じ時間に起きてしまってやることが無かった俺は、元々物が少なく、しかもつい昨日掃除したばっかりの部屋を、また掃除していた。

掃除もすぐに終わってしまって、本当にやることが無くなってしまった俺は、結局ボーッとしていた。

その時間は、自他共に認める仕事人間な俺にとって一番虚しい時間でした。まる。

「というか零、もうそろそろお嬢様を起こしに行く時間じゃないか?」

「え?あ、ホントだ」

「銀食器は俺やっとくから、早くお嬢様のとこ行ってこい」

「うん。ありがとう、巽」

そして俺は、巽の柔らかいテノールの声をバックに、仕事場を後にした。