長い廊下に並ぶ、大きな窓から光が惜しみなく降り注いでくる。

…このお屋敷は、とても暖かくて優しい場所だ。

皆が生きていた頃の私の家も、決して広いとは言えなかったが、とても暖かくて優しい場所だった。

あ……思い出したら、痛くなっちゃった。
胸が、ズキズキする。痛い。

「――お嬢様?」

その声で、ハッと気が付いた。
横を見ると、垣元さんが不安気な表情で私を見ていた。

「あ…」

呆れられるか、それとも面倒だと思われるか…。

「っ………」

そう思ったら、彼から視線を外してうつむいてしまった。

「お嬢様、」

コツンコツンという、革靴の踵が床を叩く音が廊下に乱反射して耳に届く。

気配で、彼が私の近くまで来たのが分かった。

「……はい」

「この屋敷は、美しいでしょう?」

「え……」