職員室に向かうと担任の瀬川がそわそわし待っていた。


「卓ちゃん、なに?」


僕は尋ねた。


いつもなら笑顔で答えてくれる卓ちゃんなのに、今日は笑わない。


「今、校長室に幸村の両親が来てる。」


「え・・?なんで・・?」


胸がざわめき出す。



「理由はまだわからないが・・退学届けを・・持ってきているんだ」




“退学届け―・・・”





「まじかよ・・」



僕は迷いもなく校長室に飛び込んだ。



部屋を開けると両親が退学届けを校長先生に渡しているところだった。



「勝手に何をしてるんですか?!」



荒れた息で両親に問う。




「見てわからないのか?退学届けを出しているんだよ」



父は冷静に答えた。



その横で母が座っている。



「俺は退学なんてしません」



「だめだ!!お前は退学させる。こんな学校には置いておけない!」



「嫌です。父さんがなんて言おうと俺は退学なんてしません!」



「もう決まった事だ。お前は、明日からアメリカに留学するんだ。」



―アメリカ・・?


―留学・・?




「なぜ留学など?」



「お前を日本には置いておけないからだ」



「意味がわかりません。俺は日本にいます。父さんがなんと言おうとっ・・ッ・・」



バシッと、父の右手が頬に直撃した。



「あなたっ」



母が初めて声を出した。




「お前は・・・こんなに私たちを苦しめて・・恥ずかしいと思わないのか?!」



父は顔を真っ赤にし、興奮していた。


教師達は止めることもなく僕らの行為を見つめていた。




「恥ずかしい?なにがですか?先生を愛してることですか?」



殴られたとこから血が流れ出す。