かすみは 何度も振り返りながら 歩道の向こうへ 歩いてゆく ジンジャーエールの空き瓶を 倒すゲームをしている若者たちの 歓声が聞こえた ぼくは もう一度かすみに触れたくて 手を伸ばすと 突然若者たちの群れが ぼくとかすみの間を通りはじめる 群れは 長かった 「かすみ!かすみ!」 ぼくは大声で叫んでいた 伸ばした手の先には 冬の街の 冷たく乾いた空気があるだけで ぼくの体は 指先から冷えていった