あったかいな。
心がほっこりする。
満月を見たときみたいな、あったかさ。
あぁ、私もあんな風になりたいな。
馬鹿だし、ノロマだし、いいとこなんてないけど、いつかあんな風に笑えるようになれればいいな。
なんて、そんなこと無理か。
私みたいな人が、誰かをそんな気持ちにするなんて無理に決まってる。
無理な理想は抱かない。
そうしないと、後で自分が辛くなるだけだから。
そうしないと、きっと自分が今まで必死に守ってきたことが崩れてしまう。
私は、その老夫婦から目をそらした。
自分を守る為。
現実から目を反らす為に。
微かに潮の匂いがする。
窓の外を見れば、目の前には広い海が広がっていた。
空の色を映して、青く輝く海はすごく綺麗だった。
「ねぇ、じーちゃん。なんで海は青いの?」
「海が空の色を映しているからだよ」
「なんで海に空の色が映るの?」
「それはね、空と海が仲良しさんだからだよ。空は海が好きだから、透明じゃ寂しいと思って青を分けてあげたんだよ」
「仲良しさんかー。満月も仲良しさんほしー」
「満月にもいつか仲良しさんが出来るよ」
ふいに昔じーちゃんとそんな会話をしたことを思い出す。
どんな状況でそんな会話をしたのかは忘れてしまったけど、この会話をしたことは覚えている。
ねぇじーちゃん、私に仲良しさんは出来なかったよ。
私はいつも一人ぼっちだよ。
そんなことを思いながらずっと青い海を眺めていた。


