朝食を食べると、あわただしく身繕いをして僕たちは外へ出た。
駅までの道のり、僕は蛍子の手から三味線のかばんを持ちかえた。


「あ、ありがとう。」


驚いたように蛍子が言った。


「こんなに重いとは思わなかった。凄いな、いつもこれ持ち歩いてるんだ。筋肉ついちゃうね。笑。」


あまりの重さに、はっきりいってびっくりした。

「今日ははりきって仕事できそう」

蛍子が僕をじっと見た。僕は心臓がどきどきして顔が火照るのを感じ恥ずかしくなった。
駅までの道のりが長く永遠に続けばいいと思いながら歩いた。


駅が見えてくると蛍子は大きい目をくりくりさせながら言った。


「ありがとう、もういいわ。あなたはあっちでしょ?私はここだから。」


僕達は駅の改札をぬけると右と左に別れた。僕は必死だった。大きい声をだし笑われてもかまわないとおもった。



「また、連絡するから!仕事頑張れよ!!」


蛍子は笑いながら手を振った。