蛍子はしばらく沈黙していたが、ため息をつくと話を続けた。


「もう終わったの…。私はエントリーしてたけど出なかったの。」


僕はまたやっちまった。


「ごめん。こんな事聞くつもりは…う、うん。」


「いいのよ別に、私そんなに気にしてないし。それに大会はまた来年もあるしね。実家でちょっとゴタゴタがあってね、でもそれで良かったの。私旅回りで練習時間足りなかったし。自信なかった笑。」


そう言って蛍子は笑った。
僕は何かもやもやしたものが心に残った。蛍子さんてなんて言うか、他人には弱みを見せないんだ。そういう人だと漠然とわかっていた。

「そうやってさ…。やめ…な」


「えっなに?声が小さくて聞こえないわ。」


「そうやってさ…ため込んでるなよ。辛いとかたいへんとか僕に話して気がすむならいつでも聞くから。」

「ありがとう。ありがとう、りょうくん。」