僕は立ちすくんでいた。
完全にやられたんだ。
そう、僕は冬椿に恋をした。

「おい、何やってんだ。」

不意に後から肩を叩かれた。振り返ると、同じ大学のゼミの奴だった。

「あ、ああ何でもないさ。」

僕は慌ててケータイをしまう。

「ははーん、さては今の子、彼女だろ?どこの子だ紹介しろよ。」

「違うよ、バイトだったんだ。今日スーパーのイベントで来た、歌手だよ。駅まで送ったんだ。」

「ふーん歌手、そうか。まあいいや、俺これから合コンなんだ。」

こいつは、入学当初からなれなれしい奴なんだ。でも何故か憎めない。合コンかー、良いとこで会った。

「あ、それいいかも。僕も乗った。」

「だめだめ、人数ちゃんとそろえたんだ。じゃあな、今度連れてくから。」

そう言うと意気揚々と行ってしまった。
僕はため息をつきケータイを取り出すと、冬椿のメアドを確認した。