冬椿は、僕の顔を見ながら言った。

「ごめんなさい。笑って悪かったわ。でも、今日会ったばかりなのに。あなた、変わってるって言われない?」

「まあ、それは…普段は違うさ。学生なんて、だいたい僕と似たようなもんでそう代わり映えしない毎日なのさ。君は僕達とは違う世界にいるし…そのなんて言うか…興味心て…いうか。」

「ふーん…、そうなんだ。」

冬椿が、気の抜けた返事をした。
気が付くともう、駅の前だった。僕は慌てた。今日を逃すと、一生会えないと思った。

「あの、これから仕事行くの?あ、いや、余計なお世話だよね。あの…」

僕は何だかため息がでた。そうさ、会ったばかりの僕には関係ないさ。
冬椿はケータイを出すと、僕に言った。

「ケータイ出して。」

「え?」

「ほら早く。電車が来ちゃうから。」

僕は慌ててケータイを出した。
そして、アドレスを交換する。冬椿はケータイをしまうと、僕を見て言った。

「仕事先でつまんない時、メールするかも。またいつか、何処かで会えたら良いね。」

そう言うと改札口へ急いだ。
僕はぼーっと見送るしかなかった。