冬椿は、大きな瞳を僕に向けると言った

「家はね、劇団やってるの。一座で旅回りしてるの。だから、普通の家にはない色んなものがあるの。」

「へえ、そうなんだ。あこがれるな、芝居しながら旅から旅へなんて。」

冬椿は急にまじめな顔になった。

「子供の頃は、嫌だったわ。いつも友達ができたくらいに、また移動しちゃって寂しかった。」

僕は、ちょっとまずい事訊いたかなと思った。
それを見透かしたように、冬椿は言った。

「でもね、舞台は楽しかったの。みんな子供が出ると喜んでくれた。おひねりも、飛んで来たし。」

「すごいなー僕の家とは真逆な世界だよ。うちは両親とも公務員で厳しくて、進学したのも自由が欲しかったのもあるな。」