気付かれたのだろうか…？

私の焦りは再び顔を出し始め、鼓動は普段の倍の早さで胸を打ち続けた。

再び顔を出し覗き込む事は出来ないが、果たしてこのまま待ち続けて良いものだろうか？

また機を逃してしまうのではないだろうか。

この老人を逃せばもう本当に私の気持ちが萎えてしまうような気がする…。

何故老人の声は聞こえなくなったのか？

気付かれた為にこちらを警戒しているのでは無いかと、非常に可能性の少ないそんな疑問が心を支配する。

鼓動が更に速さを増し、居ても立ってもいられなくなった私はその場を少し離れようと歩き始めた…。

直後に背後に気配を感じ、つい足を止めてしまう…。

ゆっくり前に歩きながらもちらりと後ろに感じる存在を確かめると…そこには青年が立っていた。

「もうすぐ来るよ…。」

彼はちらりと目で合図を送る。

あそこから出てくるぞと。

程なく先程の老人が顔を出す…。

もう一人の老人は…？

我々とは反対方向に歩いている彼は明らかに一人だった。

こちらを振り返りもしない老人の後ろ姿を確認すると胸の高まりは一先ず治まりを見せる。

青年に促され、私は少し間を置いてからゆっくりと歩き出した。