「子供なら簡単に連れ出して簡単に殺せるよ？」

そして頭を抱え込んだ私にまたこの男は恐ろしい言葉を浴びせ掛けて来るのだった…。

子供…。

確かに子供なら…。

私はもう人間としての心を失いつつあった。

しかし、やはり子供は…。

ためらう私に彼は更に追い打ちをかける。

「やっぱり小さい子供じゃないとこっそり殺すなんて無理だよ。」

私は何も反論が出来ない。

「それともお年寄りを狙う方がいいかな？」

…まるで誘導されるかの様に私の気持ちは次々と動かされ続けた。

幼い子供よりはまだ…。

「少し、考える時間をくれ。」

私の要求に彼は案外素直に応じた。

これ程歩き続けたのに、いい加減早くしろと苛立ってはいないのだろうか？

それ程にこの男には時間があるというのだろうか…。

それとも、それ程までに人の死ぬ所が見たいのか…。

どちらにしても私の理解を越えた所の話だ。

とりあえず近くのベンチに腰を下ろし、一つ大きな溜息を吐き出した。

余り冷静に考え過ぎないように、出来る限り論理的に考えるように…。

複雑に頭を働かせた。

…やはり老人を狙おう。

子供では未来を奪う事になってしまうだろう。

若い人間では体力的に敵わない事が考えられる。

一人で歩いている老人を見つけるのはなかなか難しいかもしれないが…。

頭が、やはりそれしか無いという判断をした。