あいつは俺の手元の機械を興味深そうに見ながら聞いた。

「パソコンで小説書いてんの?」
 俺は平静を装っていたが、心が騒いでいた。
「・・・ああ・・・」
「見せてよ」
 俺は気の強い女に言われたような気がして、慌てて上書きの処理をするとあいつにパソコンを回した。

 あいつが頬杖をついて矢印キーを叩いて居る間、資料を見るふりをして、あいつの表情を伺っていた。確かに読んでいるようだ。時々、考えるような様子をしたりちらと俺を見た。

 しばらくして、
「ふーん。まだ始まりってとこだね。戦国時代ってこんな男同士の契りって普通だったんだ。この主人公の少年ってゲイなの?」
「・・・心に女の部分があるんだよ。今で言う性同一障害かな」

 あいつは俺を明らかに軽蔑したようだった。
「まさか、あんた、ホモじゃないよね?」

 俺はさっきの礼も言わず、ずけずけ物言うこいつの態度に腹が立ったが、怒ってもしょうがないと考え、
「・・・そうだったらどうする?」
「あはは、やばい!俺、どうも女みたいに見えるようだから、狙われたりして」

 鬼芦に狙われてるんだろう、と言おうとしたが、俺は苦々しく言葉を飲み込んだ。