あいつはくすっと笑って、
「今度は大賞だよね?」
「読んだのか?」
「いいや」

 俺はぎゃふんとなったが、気を取り直して聞いた。
「追われてたのか?」

 あいつは外を見ながら、
「あいつらしつこいんだ。あの団長が。無理に俺を応援団に入れようとするもんだから、金玉けっ飛ばしてやった」

 俺はあっけにとられた。口も悪そうだが喧嘩っぱやそうだ。
 そのときあいつは帽子をとって頭を掻いた。暗い茶で染めた髪が首まで垂れた。
 俺はあいつが俺好みの顔をしていることに気づいた。瓜実顔で気の強そうな眉と目。髭がまだ生えないのか、柔らかな曲線を湛えている頬と顎。意志の強そうな口元。体も中性的な丸みを帯びている。小太りなのかもしれない。

 肉付きのいいのが好みの俺は、こいつが女だったらアプローチしていただろう。俺はそのとき、まだ、まともだった。