あまり見通しの良くない硝子の外を見ると、2、3人の柄の悪そうな学ラン姿の連中が走ってきた。

 応援団の連中だ。

 中の180センチ級のガタイ(体格)をした奴が口から泡を飛ばして他の連中に指示している。応援団長の鬼芦(おによし)だ。乱暴で評判が悪い奴だ。声が潰れ、苦しそうにだみ声で話すので、我が大学の『ダースベーダ』と渾名を付けられている。

 店内を硝子越しに奴はみたが、俺と目が合った。眼を飛ばすように俺を睨み付けた。こいつとは前に些細なことで、喧嘩寸前まで行ったことがあるのだ。
 奴はぷいと他を向くと仲間に怒鳴りながら行ってしまった。俺だけに気を取られた様だ。

 奴らが行ってしまうと、あいつは顔を上げ、ほっとしたようだった。サングラスを外し暫く下を向いていたが、俺の方を見て、
「あなた、文学部の角南大介さんだろ?」
「・・・あ、ああ。君は?」
「俺、1年の柳生林太郎。サッカー部」
「学部は?」
「一応、電子工学だよ。でもサッカーをやるためにこの大学に入ったんだ」
「・・・頭が良いんだな。サッカーやるために電子工学に入る奴はあまりいないぜ」
「まぐれさ・・・へへっ」
「なんで俺を知ってるんだ?」
「有名だよ。小説家志望の大介さんて。この間、芸文館歴史小説大賞にノミネートされただろ?」
「・・・ああ、まぐれさ」