俺は次の日もその次の日も、横たわったままあいつの幻を追って過ごした。

 腹が空けば保存食料を喰らったが、そんなに買い貯めてあるわけでもない。時間が経つとあいつの下着の匂いを嗅ぎ、自慰をした。体力とは全く別の、俺の精神の中の獣が俺の性欲を支配していた。
 俺は本当に気が狂ったのかも知れない。ただ、あいつの『感触』が失われて、喪失に絶望することが怖かった。
 俺の喉はからからになり目眩がするようになった。それでも俺はあいつの汗と尿の匂いにおのれを狂わせた。
 熱が出て来たのだろう。俺は動けなくなった。


 どのくらい寝たのか。気がつくと暗がりの目の前に誰か居る。
 俺の額をそっと触った。
「・・・あ・・・」
 あいつが俺の顔を覗き込んでいた。怒りを含んだ眉と瞳。
「ちょっと待ってろよ。水と薬を持ってくる」
 俺は信じられなかった。あいつが俺の部屋にまた来た!
 裏切りと苦痛の思い出の部屋に!
「・・・なぜ、戻って来た?」

 俺の頭の下に枕を敷いて、コップを近づけるあいつに聞いた。