「は?…何言ってんの?」

「…言えないの」

「言えないってどー言う事?」


葵はそれ以上、何も言わなかった。ただ俯くばかりで目元に手を当ててすすり泣く。


「ねぇ、葵?」


あたしがいくら声を掛けても葵は何一つ言葉を出さずに俯いていた。

葵が何考え込んでんのかは分かんない。葵は普段、全てを抱え込んであまり口に出さない。

だから多分この事に気づいた時も本気で悩んだ末であたしに言ってきたんだと思う。


1時間近く経っても葵は口を開く事はなく、もう外の日も落ちていた。

ただあたしは葵のその姿を見つめてて側にいる事しか出来なかった。


とりあえず今日はゆっくり休ませないといけないと思ったあたしは、今にも崩れそうな葵を家まで送り届けた。

本当は一人で居られる状態じゃない事くらい分かっている。

だけど、葵の家の事だってある。葵の家に執着してるって事じゃないんだけど、やっぱし帰らせたほうがいいと思った。