茫然と翔を見つめてると翔は箱から指輪を取り出しあたしの右薬指に指輪をそっと嵌める。

あまりにも綺麗に輝きすぎていてその指輪をボンヤリと見ていると、もう一度翔に抱きしめられていた。


人の目なんて気にならなかった。いつもなら人前なんて嫌なのに何も気にならなかった。


「帰ってきたら俺と結婚して。5年後…今よりいい男になってるから」


そう言って翔はフッと鼻で笑う。


「あたし…ワガママだよ」

「それでもいい」

「あたしと居たら疲れちゃうよ」

「それでもいい」

「あたし…翔が思ってるほどいい女じゃないよ」

「美咲がいいから。俺にはみぃちゃんしか居ないから。だから…結婚してほしい」


“返事は?”

付け加えられた言葉と同時に嬉し涙が頬を伝ってた。

声を押し殺して泣くあたしに翔はさらに抱きしめる。


「返事…聞かせろよ」

「あたしでいいの?」

「美咲がいい。返事は?」

「…お願いします」

「ありがと」


スっと離れて行く身体から翔を見上げると翔は口角をあげたまま微笑んでて、これ以上何もないくらいに幸せだった。


「もう…行く」


近くにあった時計に目を向けてあたしはそう呟く。