「何?」

「うん。…ありがとね」

「は?」


思いがけない諒ちゃんの言葉が返ってきた所為で、あたしは諒ちゃんに視線を送る。

諒ちゃんはあたしに視線を向け、まるでその目線が何言ってんだって感じに見えた。


「だから、ありがとって言ってんの」
 
「つか、俺別に何もしてねぇもん」

「じゃ、そう思ってんのならそれでいいんじゃない?諒ちゃんさ、マジでむかつくけどいい男だよ。迷惑いっぱいかけたけど色々感謝してるから」


ホントに感謝してるから。


「つかよ、ムカツクはすげぇ余計だし、別にお前に褒められたくもねぇよ」


そう言った諒ちゃんは薄ら笑い、あたしの額をツンと人差し指で突く。


「でも、ホントありがと。…それにしても諒ちゃんって葵よりあたしの方が付き合い長いのに一度も好きにならなかったね」


フフっと笑い、そのあり得ない言葉に諒ちゃんは顔を顰め、何だコイツって感じの顔であたしを見つめた。


「お前なに言ってんの?馬鹿かよ」

「諒ちゃんより馬鹿じゃないから」

「じゃあ、アホか?」

「諒ちゃんよりアホじゃない」

「俺は余計だろーが。つか、お前も俺に興味ねぇじゃん」 

「だって対象外だもん」

「対象外とか言うな」


深くため息を吐きながら笑う諒ちゃんにあたしも笑みを漏らした。