「どした?」


暫くして入ってきた翔はそう言いながらベッドに腰を下ろす。


「あ、」


あたしは慌てて通帳を布団の中に隠す。


「まだ迷ってんの?」


手に持っていたペットボトルの水を口に含む翔から目を逸らし、あたしは翔に背中を向ける。

何故か翔の顔を見れなくなってしまった。

この話をしながら翔の顔を見ると、また悩みに陥りそうで…


「迷ってるって言うか…」

「何?」

「分かんない」

「何が?」

「あたしがする事、あたしがしてあげられる事は何かって。ママにしてあげられる事」


そう言ってあたしは深呼吸をする。


「別にそのままでいいんじゃね?みぃちゃんはそれで充分だと思うけど」

「充分って、あたし何もしてない」

「うん。つか、そう思える事だけでいいって事。思わないよりそう思えるってだけでいい事じゃん。お母さんだってきっとそう思ってると思うけど」


暫くして翔はベッドに横になる。

あたしの背後で少し弾んだベッドでそう思わせた。


「…だと、いいけど」


そう言ったもののやっぱり気分は冴えなかった。

心の何処かでやっぱり何かが引っ掛かった様な感覚にしっくりこなかった。


「他に何かあんの?」


まだ不満そうに思ったのか翔はそう言って問い掛ける。


「…ごめん、ね」


そうあたしが小さく呟いたのは暫く経ってからだった。