結局浸かる事なくシャワーだけで終わらせたあたしは濡れた髪をタオルで拭きながらリビングへと向かう。

向かった先に見えたのは翔で、ソファーに座ってタバコを咥えたままテレビに視線を向けていた。

ほんと、この人はどんだけ吸うんだろう…

結局、身体の事もどうなってんのか分かんないし。


「おー、浸かった?」


あたしに気づいた翔は声を掛ける。


「ううん」

「浸かれよ」

「うーん…」


あたしは曖昧な返事をし冷蔵庫へと向かう。

そして冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しコップに注いだ。


「入るわ」


口に水を含んでるあたしは翔の言葉でコクンと頷く。

飲み終わった後、髪を乾かしあたしは通帳を持ったままベッドに横たわる。仰向けになったまま顔の上で通帳を開けそれを眺める。

あたしが小学生くらいの頃から毎月コツコツと貯められているお金。

月に3万入っている時もあれば4万、5万と振り込まれている時がある。それを見ただけで、本当に申し訳なくなった。

寝る間を惜しんで働いていたママはあたしの為にここまで貯めていてくれた。

でも、あたしはママの為に何かをしてあげたって言う記憶すらない。


「ごめんね、ママ…」


ママが貯めていた最後にまた新しく刻まれた500と言う数字。

やるせないため息が出る。


あたしには何が出来るだろう。

あたしはどうすればいいだろう…


ため息とともに出てくるのはそんな言葉ばかりだった。