「怖いって…何が?」

「分かんない。分かんないけど怖いの」


言葉に表せないほど自分の行き場のない先が怖かった。

諒ちゃんの事も葵の事もママの事も。そして…あたしが行きたいと思ってた先の事を。全てに対して分かんなくて怖かった。

そんなあたしを翔は抱きしめる。さっきよりも体温が伝わってくるこの感覚が何だか居心地良く感じた。


「無理しなくてもいい。強くなろって思わなくてもいい。ただ、そのままのみぃちゃんで居ればいい」


そう言って翔は暫くの間あたしを抱きしめ、あたしはその温もりに身を委ねてた。



時間が経った。

どれくらいの時間が経ったのかなんて分かんなかった。どれくらい寝ていなかったのかわからないけど翔はベッドに横になると、そのまま寝息を立てて寝ていて、その横であたしは翔の背中をずっと見てた。

だけど、いつも通り時間は過ぎて、またいつもの時間になる。

朝仕事に行って、帰って来てまた夜になる。

翔がスーツに着替えるとまた…寂しさが戻ってきた。


一人ぼっちになる夜。

真っ暗になった空が異様に怖く感じる。

昼間の仕事がなければあたしとずっと一緒に居てくれた。

何もする事はなくただ翔はあたしの傍に居てくれた。たったそれだけでも、あたしの心が和らいでる気がした。

だけど逆にそれが申し訳なく感じ、だからと言って自分の家で一人になるのが余計に怖かった。


だから嫌な事を何も考えないようにと、あたしはひたすら寝続けた。


そんな日が続く中、気づけば12月を迎えてた。

冷え切った空気が肌を指す頃、あたしの荷物がだんだんと翔の部屋に増えていき、あたしは翔のマンションで寝泊まりするようになってた。