「…ってか言ってる意味が分かんない。とりあえずここから出よ。話聞くから」


そう言って葵の手を引っ張った時、スカートに入れていた携帯電話が震え、あたしは葵の手を離し携帯を取り出す。

取り出して画面を見た瞬間、あたしの背中に嫌な汗が伝い身体が寒気に襲われた様な感覚になった。


相手は諒ちゃん。


きっと、さっき訳の分かんない電話をしたからだ。それか、葵に掛けたけど繋がんないか…そのどっちか。

何だかバレている様な予感がし、さらにあたしの心臓がバクバクと慌ただしく鳴っていく。


「…美咲?」


不意に聞こえた小さな葵の声に軽く首を振る。


「行こ」


そう言って葵の手を握って部屋を出て出入り口に立っているジュンの横を通り過ぎると、


「逃げんなよ」


薄らと笑って告げるジュンの声が耳に届いた。


「美咲…」


アパートを出てすぐに葵は哀しそうな声であたしを見つめ、そんな葵にあたしは優しく微笑んだ。


「大丈夫だよ」


なんて言ったけど実際は大丈夫なんて思えなかった。

未だに震え続けてる携帯が気になって気になって、どうしようもなかった。


Γ美咲、あたし…」


ジュンが居たアパートを離れて街通りに出た時、葵が不安そうな声を出す。