静まり返った真夜中。

聞きたくて聞きたくて、でも自分に言い聞かせてまで会わないと決めた人の声があたしの耳に届く。

その所為であたしの足は必然的に止まった。


別に止まるつもりはなかった。でも、翔の声に反応して無意識のうちに足が止まってた。


気になるから。ちょっとは意識してるからなのかもしれない。でも、ここには居れないと思ったあたしは、動かすにも困難な足を必死で動かす。

ゆっくりと足を踏みしめた時、


「待てよ。…美咲!!」


今度は翔の叫ぶ声が聞こえた。


いつもなら“みいちゃん”って笑って優しく呼ぶのに今回は違った。

怒ってるような声。逃げんなよって言う感じの声。面倒くさいって言うような声。どの声にもとれるような声。

何かを言わなくちゃいけないんだけど、全然言葉が見つかんなくて口が動かなくって、あたしは無言のまま足を進めた。

何だか手が震える。今までなった事のない感覚に何だか怖かった。と、言うよりもあたしの頬に熱い涙が滑り落ちてた。


分かんないけど怖かった。翔に避けられる事、批判される事。翔が今、何を思ってるのか分かんなかったけど、二人になる事が怖かった。


顔を見ると涙が溢れて壊れそうだった。