「早くしろよ」


助手席のドアを開け、あたしの腕を諒ちゃんは掴む。


「ちょ、だから何でよ!!」

「だから言ってんだろ。俺これから行く所あんだって」

「そんなのあたしを送ってからでもいいじゃん」

「だから送ってんだろうが」

「ここはあたしの家じゃないよ!!離してよ!!」

「うっせぇなぁ…」


諒ちゃんはため息交じりで呟き、強く掴んでくる左腕がキリキリと痛みだす。でも諒ちゃんはそんなの関係ないって顔つきで、あたしの腕を強く引く。

その所為であたしの身体は必然的に車内から出て…


「あっ、」


思わず視界に捕らえた人物に声を漏らした。


少し離れた所の花壇の石に前かがみになって座っている翔が目に入った。

翔はこっちを見ることなく、ただ地面を見つめながらタバコを咥えている。


何かもう、最悪。


そう思うと自然的に深いため息が出ていた。