「何でこんな所まで来んの?」

「お前が無視すっからだろ」


あたしの髪に触れていたジュンの手を払いのけ、あたしはジュンに背を向けて歩いて行こうとしたが、素早くジュンに手を掴まれ、あたしは必然的に動けなくなった。


「何?」

「ちょっと来いよ」


掴まれている腕にジュンは力を入れ、その所為であたしの眉間に思わずシワが寄る。

ゆっくり振り返るとジュンは笑みも何も浮かべず後方に指差した。

その指された方向に視線を送ると黒のワゴンが目に入り、あたしはそれを見た後すぐにジュンに目線を切りかえた。


「何?」

「乗れよ」

「乗って何処行く気?」

「それは着いてからのお楽しみ」


そう言ってジュンはフッと不愉快な笑みを漏らす。


「あたし、もうあんたと係わる気ないから」


思った通りの言葉を吐き出すと、ジュンの眉が一瞬にして寄ったのが分かった。

でも、


「何で?」


ジュンはすぐに表情を変え薄らと笑みを漏らす。