「どっち?」


首を傾げながら聞いてくるジュンに隣にしゃがみ込んでいるユウキは笑いながらタバコの煙を吐き出す。

そんな二人を目にして早く帰りたいと思ったあたしは鞄の中から携帯を取り出した。

取りだしてすぐ、あたしの携帯はジュンの手に移りジュンはあたしの番号を自分の携帯に器用に入れていく。


その光景をただただあたしは何も言わずにぼんやりと見ていた。

もうこんな所でダラダラと話すのも面倒。どっちかなんて言われて迷う必要すらない。


掛ってきても出ない。拒否すればいい。


あたしの番号を収めたジュンの手から素早く携帯を奪い取り、足を進めながら手に持っている携帯を無雑作に鞄の中に突っ込んだ。

突っ込んですぐ鞄の中から微かに聞こえる振動の音。震えてくる振動が何故か苛立ちをまし、あたしは鞄の中から携帯を取り出し、苛立ったまま通話ボタンを押して耳に当てた。


「拒否すんなよ。じゃあ、またな」


そう言ってきたのはジュンの声で、まだ数メートルしか離れていない所為か、後ろの方からも二重になって声が重なって聞こえ、その声とともに笑い声までもが重なっていた。

そんな声を耳にしながらあたしは何も言わずに耳から携帯を離し、もう一度、無造作に鞄の中に突っ込んだ。