夜の海は人なんて居なくて、あたし達だけだった。翔は足を進め目の前にある石の階段を下りて行く。

その翔の後ろ姿を見つめながら、あたしもゆっくりと足を進め、石の階段を降りて行く。


あたしの履いているヒールの足音が心地いい波の音で消されていく…


真っ先に見える翔は階段を降りきって足を止めあたしを見上げた。


「みぃちゃん…」


あたしの名前を呼んで手招きする翔をチラっと見て、あたしは15段くらいの階段を降りた。


「もっと先でもいいけど、みぃちゃんヒールだからここまで」


“カカト埋もれちゃうっしょ?”

そう付け加えて、翔は階段の一番下の段に腰を下ろしあたしを見上げた。


「そんな短いスカート穿いて寒くない?」


翔はうっすら笑いながらあたしを見つめ、あたしはその言葉に首を横に振り、翔の隣に腰を下ろした。