自分の言った言葉がそのまま返されて、あたしはただ立ち尽くす事しか出来なかった。

さっき葵をぶった右手が痛む。それ以上に葵の頬はもっと痛いのに“ゴメン”すら返せない。


その葵と同じぐらい痛いのは、葵を叩いたと言うあたしの心だった…


それに、あたし自身がやっている事が相当に重くのしかかっていて口さえ開かない。


葵は立ち尽くすあたしを見たまま何も言わずに背を向けて家の門を潜って行った。

その葵の姿を見て思わずあたしの口から深い溜息が漏れ、額に手を当てた。


自分の事も葵の事もどうしていいのか分からない。


本当に情けない。


込み上げてくる感情が余計に痛々しさを増す。そして、ドロドロとした感情があたしの身体を支配していく。

暫く立ち尽くした後、ゆっくり後ろを振り返ると思わずあたしは声を漏らしていた。


「あっ…、」