「そんなことないって」
久遠さんに向かってそう言ってから、うっとりするような笑顔を私に向ける奏さん。
――花屋での営業時の笑顔よりも、さらに美しい笑顔であることは間違いないです。
が。
それは、腹黒さ満点の時の顔ですよね?
私、もう知ってますよ?
「だって、茶室に来たときの智は、まだ完全に覚醒してなかったよね?」
もう、知ってると思ってた。
奏さんの腹黒さ。
――それなのに。
アルトに近い声でさらりと告げられたその、言葉の意味が私にはさっぱり分からない。
「……え?」
「ほら、ダイニングで紅茶を飲んだときの智とは、別人だった気がしない?」
「な、なんとなく」
奏さんの勢いに押されて、思わずそう言ってしまう。
「でしょ? それが、智の秘密。
いや、秘密ってほど大げさなものじゃなくて。
そう、個性。
個性みたいなもんだから、気にしないで。
じゃ、僕はこれで……っ」
でも、久遠さんは奏さんのシャツを離そうとはしない。
久遠さんに向かってそう言ってから、うっとりするような笑顔を私に向ける奏さん。
――花屋での営業時の笑顔よりも、さらに美しい笑顔であることは間違いないです。
が。
それは、腹黒さ満点の時の顔ですよね?
私、もう知ってますよ?
「だって、茶室に来たときの智は、まだ完全に覚醒してなかったよね?」
もう、知ってると思ってた。
奏さんの腹黒さ。
――それなのに。
アルトに近い声でさらりと告げられたその、言葉の意味が私にはさっぱり分からない。
「……え?」
「ほら、ダイニングで紅茶を飲んだときの智とは、別人だった気がしない?」
「な、なんとなく」
奏さんの勢いに押されて、思わずそう言ってしまう。
「でしょ? それが、智の秘密。
いや、秘密ってほど大げさなものじゃなくて。
そう、個性。
個性みたいなもんだから、気にしないで。
じゃ、僕はこれで……っ」
でも、久遠さんは奏さんのシャツを離そうとはしない。