「なんだ、来客がいらっしゃったのか。
 そうならそうと言ってくれれば……」

「私が喋る前に、お父様が一方的に話し始めたんじゃない」

とにかく、私は行くわね、と。
巫女さんは去っていく。

代わりに、ひょこりと顔をのぞかせたのは、チノパンにTシャツというラフな格好をした中年のおじさま。
巫女さんのお父さんというだけあって、若いときのかっこよさを忍ばせるような風貌だった。

今は、そう。
笑顔の素敵なロマンスグレー。

「ああ、智保くんじゃないか。
 久しぶり。
 相変わらず、刀作りに燃えているのかな?」

彼は、そういって、智さんににこやかに笑いかけてきた。
その笑顔は、確かに、巫女さんに似ている。

「ご無沙汰してます。
 はい、刀の方は相変わらずです。
 少しは上達したと思うのですが。奥が深いですね。
 本日はご相談に伺ったのですが、一応話はつきましたので、また、お邪魔させていただきます」

「いつでもどうぞ」

おじさま――彼はここの神主だと後で智さんに聞いた――に見送られて、私たちは帰路についた。