女子高生夏希のイケメン観察記

「伊達さん。
 クロに逢いたいんですよね?
 私の心当たりの人物に、逢いにいきませんか?」

ありったけの勇気を絞った私は、真っ直ぐに伊達さんを見た。

不思議。
智さんと同じ肉体のはずなのに、その表情はずっと険しく、重々しく、なんだか別人に見えるんだもの。

手が触れたら、私が壊れてしまいそうなほど、伊達さんはぴりぴりとしたものを背負っていた。

「無理だ」

低い声で短く言い捨てる。

「……どうして、ですか?」

私は震えそうになる声をなんとか抑えて口を開く。
巫女さんが助け舟を出してくれた。

「彼は今、この場所だから姿を現すことが出来るの。
 普段は、何かのきっかけでのみ姿を現すんじゃないかしら」

「日本刀を持てば……」

私は再び、残り少ない勇気を絞って唇を開く。

「腰に刀も差せぬような腑抜けた世界で、日本刀を持ったまま余が出歩ける方法を知っておるのか?」

挑戦的な眼差しを向けられればもう、俯くほか、ない。
再び唇を開くほどの意見もなければ、勇気ももう、全く残っていなかった。