女子高生夏希のイケメン観察記

私は思わず、殿から巫女さんへと視線を移す。

改めて考えてみれば、『本名を名乗らない不自然さ』という共通項を持ってるわね、この人たち。

「そう。
 シロちゃんって、殿の教え子だったのね。
 気の毒に」

視線を合わせたまま、蕩けるような笑みをその口元に湛えたまま、巫女さんはさらりとしかし真剣に、私に同情を示す。

「そんなに羨ましいのか。
 気持ちは分かるぞ、巫女ちゃん」

殿は人の言葉を自分に都合よく聴き間違えるプロだと誰かが言っていたけど、まさにその実例を今、私の目の前で見せてくれている。

「しかしまぁ、天下の伊達男、伊達政宗氏を捕まえるなんて。
 千崎も隅に置けないなぁ」

殿が感心したように言う。

いえ、その。
隅に置ける、置けないの問題は遥かに超越しているように思われるのですが。